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#09 自宅以上に落ち着く理由。”石本藤雄流”飾らない飾り方

ホテル茶玻瑠

ロビーを抜けエレベーターに乗り
9階を押す。
しばらく待って扉が開く。


「ただいま」

9階エグゼクティブフロア
エレベーターが開いた瞬間
この光景が飛び込んでくる

始めて訪れた場所のはずなのに
なぜこの言葉が浮かぶのか。

石本藤雄さんの作品集の他、
北欧デザインの本が置かれている

落ち着きを他者から得るのは至難の業だ。
感覚は人それぞれ
十人十色ということだろう。

ホテルに求める要素も十人十色。
ただ泊まれれば良い人、
贅沢な非日常のひと時を過ごしたい人。

北欧インテリアに囲まれた
シンプルで機能的なデザイン
左の砥部焼カップは石本藤雄さんのオリジナル
右はマリメッコ社のマグカップ

何にせよ
自分が求める基準をクリアすれば満足、
そうでなければ不満となる。
皆それぞれのモノサシで満足度を測るのだ。

ここは石本藤雄さんの
アートで飾られた世界。
ここは僕の理想の部屋であり、
理想の日常。

床材や家具に愛媛県産材を多用した
温かみと安らぎを感じられる空間

無理な背伸びもせず
シンプルで飾らない空間。
石本アートは
「お洒落だろう?」
なんて主張をせず
ただ落ち着きだけを与えてくれる。

それぞれの部屋で
異なる作品やテキスタイルが飾られている

石本藤雄さんといえば、30年以上もの間
フィンランドを代表する
ライフスタイルブランド「マリメッコ」で
テキスタイルデザイナーを務められた方。
同じく同国の老舗陶器メーカー「アラビア」でも
陶芸家として活躍された世界的なデザイナーだ。

フロントロビーでは
石本藤雄デザインのグッズなどを購入できる

2010年には、
フィンランドの芸術家に贈られる最高位
フィンランド獅子勲章プロ・フィンランディア・メダルも受賞されている。

Fujiwo Ishimotoの名を冠した
907室は和室となっている
優しい光が入る縁側からは
市内が一望できる

「9階は作品の配置まで、
 すべて石本さんが手掛けています。」

そう話すのは茶玻瑠の常務取締役岡井さん。

茶玻瑠と石本さんは、古くから親交があり、
石本さんが帰国する際には、
道後で陶芸活動が続けられるよう尽くしてくれた。
そのおかげもあって、僕たちはこうして
世界的なアーテイストの作品に
気軽に出会うことができている。

なるほど。そういう理由か。
作品の生みの親が、適材を適所に配置する。

きっとそれが、この落ち着きの秘密

僕はまた石本さんに会いたくなり
アトリエへと足を運んだ。

10階の展望ラウンジからは
道後温泉本館を見下ろせる

石本さんのアトリエは
茶玻瑠を出て徒歩で数分。
道後上人坂にある上人坂テラスに
Mustakiviと併設されている。

上人坂テラス

ここ上人坂は、
石本さんのアトリエの他にも
夏井いつきさんが庵主を務める伊月庵、
アート作品”ひみつジャナイ基地”

そして、上人坂の由来ともなっている
鎌倉仏教である時宗の開祖”一遍上人”の
生誕地でもある宝厳寺などがあり、
今昔の文化・歴史・芸術を感じられる
注目のスポットになっている。

石本さん御歳82歳!
今日も窯の前に立っていた。

Mustakiviでは現在
石本藤雄デザインの手ぬぐいを展示中

夢中で創作する姿に、
長くお邪魔をしては申し訳ないと感じ、
一言だけ先日のお礼をさせてもらった。

さまざまな石本藤雄デザインの作品が並ぶ店内
ネットショップは1時間で完売した花瓶
もしかするとMustakiviにはまだ残っているかも
松山市の花でもある椿の手ぬぐい

石本さんの飾らない穏やかな笑顔に
またしても落ち着かされてしまう。

帰り際、心のなかで、

「また今度、ゆっくり。
 色んなお話を聞かせてください。」

と勝手なお願いをして、
僕はその場をあとにした。







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