究極の醤油は世界へと羽ばたいていく|田中屋
誰も真似できない製法、本物の味を追求していく必要がある
明治頃には、全国に7000近くあった醤油の蔵元も、今では1000ほどになりました。生き残るためには、大手では真似できない製法で、他では味わえない本物の味を追求していく必要があります。
その中で、田中屋が今までやってこれているのは、国産原料・無添加・天然醸造にこだわっているからです。大豆は国産最高級品の大粒一等物を使っています。小麦は安心の地元愛媛県産。発酵期間も通常半年程度ですが、田中屋では約2年の歳月をかけ、じっくりと熟成させます。醤油の搾り方にもこだわっていて・・。閑話休題。
でもね、実際はそれだけでは難しい。お客様に手に取ってもらう、味わってもらうためには、うちの醤油を認めてくれる、よき理解者の力も大きいんです。
金額に見合った究極の醤油を完成させよう
10年ほど前に、世界各地の最高品質のオリーブオイルだけを取り扱うイタリア系のオリーブオイル専門店「OLiVO」さんから、うちの醤油を取り扱いたいという話をいただきました。
話を聞くと、「1000円で売りたい」と。私の頭の中では、500円で売れたらありがたいくらいに思っていたのですが、OLiVO社は、「この醤油にはその何倍も価値がある」と。それでも、醤油業界の相場を考えた時に、このまま1000円で売るのは気が引ける。それなら金額に見合った究極の醤油を完成させようと。そうして生まれたのが“Premium百年蔵醤油”です。
世界に認められた醤油
通常の醤油は大きな圧をかけて、もう1滴もこぼれないほどカラカラの搾りかすになるまで抽出します。ですが、この“Premium百年蔵醤油”は贅沢にも全く圧をかけず、滲み出た醤油の一部だけを集めた、これ以上ない醤油に仕上げています。
個人的には日本一の味だと自負しています。醤油の世界では、日本一は世界一ですからね。世界一の醤油だと思っていますよ。
(世界に認められた)うちの醤油は、今では、東京銀座や大阪のデパートなどでも売られています。ミラノ万博(2015)の関連イベントとして現地で開催された料理コンテストにも“Premium百年蔵醤油“が採用され、来賓に贈答されました。
他にも、松山から移住し、ブラジルに渡った人から、醸造業を成功させたいというオファーを受けて、何度もブラジルまで醸造のノウハウを教えに行きました。あっちは暑いですからね。日本よりも品質管理が難しい。個人的にもいろいろ学ぶことはありました。
その方が立ち上げた会社は、今ではブラジル有数の食品企業に成長しています。その人からは、「渡航費からホテルまで全部手配するから、会いに来きてほしい」なんて今でも熱心に言われますけど、私ももう歳ですし、新型コロナもあってなかなか実現できないですね。
認められた味は変えられない。だからこそ守り続けたい
私の代になって、生き残るために本当にいろいろやってきました。たくさん商品開発もしました。「長者三代続かず」三代目が会社を潰すなんて言われますけど、二代目から危ない状況でしたから。
今は新たな商品を考える予定はありません。でもね、今の品質を保っていれば、お客様は使い続けてくれると思っています。
うちには、松山で行列ができる新進気鋭のうどん屋さんや、このコロナ禍でも店舗を拡大しているラーメン屋さん、大阪では、予約が何カ月も先まで埋まっているうなぎ屋さんなど多くの顧客さんがいますけど、老舗料亭の顧客さんは意外にも少ないんです。なんでだと思います?
老舗には昔からの味がある。味が完成されているからなんです。だから途中で味の基本となる醤油を変えないんです。裏を返すと、認められた味は変わらない、変えられない。田中屋はこれからも今の製法、原料、味を守り続けたい。そして、いつまでも変わらずお客様に使っていただきたい。そう願っています。
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