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伝統のブルー。藍色が心になじむ伊予かすり|伊予織物工業協同組合

“日本三大絣(かすり)”をご存知ですか?

九州の「久留米がすり」
中国地方の「備後かすり」
そして愛媛県松山市の「伊予かすり」です。

絣(かすり)とは、織物技法の1つで、
伊予かすりは経絣(たてがすり)といって、
あらかじめデザインに合わせて染色を施した
何百本もの経糸(たていと)に、
機織り機で緯糸(よこいと)を通していきます。

一説によると、織っていく際に微妙にずれる文様が
擦れて(かすれて)見えることから、
絣(かすり)というのだとか。

386本の経糸に緯糸を通していきます

今回は「伊予かすり」の魅力に迫るべく、
伊予織物工業協同組合の理事長
白方基進さんにお話を伺いました。

伊予かすりの歴史

「伊予かすりは約200年前、
 温泉郡今出(現在の松山市西垣生町付近)の
 鍵谷カナさんが独力で苦心のすえ、
 伊予かすりの元祖たる”今出かすり”を
 製織したのが始まりです。
 明治末期には全国生産第1位となるなど、
 当時の松山の経済を支えた産業だったのです」

道後公園にある「伊予絣創始頌功碑」
当時の大蔵大臣、勝田主計が
伊予かすりを称えたものです

しかしながら、生活の洋風化とともに、
着物を中心とした絣の需要は低下し、
製造所は徐々に姿を消し始め、
現在、職業としている職人さんは、
(分かる限りで)1人となってしまいました。

その最後の職人さんの作業を見学させてもらいに、
伊予織物工業協同組合さんへ。

何十年も使われてきた機織り

職人技である機織り

ちょうど作業をされていたのですが、
見学して初めて知る事実。

熟練の職人をもってしても
1時間で30センチ織るのがやっとの手作業。
糸が絡まれば、繕うのに半日近く費やすことも。。。
それもこの道何十年の職人さんがです。

カタカタカタとリズミカルには進みません。
緯糸を何度か通すと経糸を調整する。
その連続で織っていくのです

絣の工程は想像以上に過酷な作業でした。
しかも全てが手作業。
ただ、この機織り作業でさえ、
全工程の中では数%に過ぎません。

この経糸の束を1本ずつバラして機織り機にセットし、
初めて織れる状況となるのです

”伝統を絶やすな”と心が訴えかける

「絣糸を作るための染色などの”下準備”
 実はこれが最も大変なのですが、
 着物のニーズが減った現代では、
 それらの産業も衰退していったので、
 かつては分業だった下準備に当たる工程も
 今は担い手がいないのが現実です。
 現状、産業として復活させることは
 難しいと感じています。
 とはいえ松山を支えた伝統を絶やしたくはない

「絣の良さはどこにあると思いますか?」

(筆者)
「柄と藍色が古き良き日本を感じさせます」

「そうですね。おっしゃる通り
 藍色というのは、何かこう和みますよね。
 日本人の心に…DNAで良さを感じるのかな。
 親しみを感じさせてくれます。

世代を問わず懐かしさと親近感を覚える
ジャパンブルー、ジャパンマインドな
藍色の伊予かすり反物

 採算の取れなくなった産業は生き残れません。
 伊予かすりを職業とする人はいなくなりました。
 それでも幸運なことに
 趣味で続けている人は、実は数多くいるんですよ。
 理屈ではないんです。
 きっと私たちの心が
 ”伝統を絶やしてはいけない”
 そう訴えかけるのです」

次のステップを迎えた伝統品

「そこで、今は発想を変え、
 伊予かすりを新たな形で
 後世に残していく取り組みが始まっています」

 それは織物としてだけではなく
 伊予絣のデザイン、色、文様を
 松山の良き伝統品として大切に残すこと。

伊予かすりの端切れで作られた
ランチョンマット

「まずは絣の文様を表現したマスキングテープや
 マグネットなどを作成し販売を始めました。
 また、愛媛民芸会館(西条市)や、
 発祥の地でもある西垣生町の郵便局で
 伊予かすり展を行ったりと、
 伝統を後世へ残す取り組みが動き始めました。
 ほかにも、ロープウェー街に
 Art Labo KASURIをオープンし、
 伊予かすりの展示、販売もしています」

 ここでは松山の伝統工芸である
 藍染めや姫だるまの制作体験もできます

若い世代、これからの人へと引き継ぐために

「でもね、本当の意味で後世に残すためには、
 我々だけではなく、
 未来ある若者に有効な活用方法を考えてほしい
 そう願っています。

 伝統を守りたいからという理由だけで
 若い人を育成しても、
 稼げなければ無責任な押し付けになってしまう。
 今後、どのような形で伝統を残していくか
 何に力を入れていけば正解なのか、
 我々には正直答えが見つかっていません。
 それでも、この伝統を
 新たな形で残してもらいたい

 今は専門学校や大学とも連携して、
 積極的にワーキングを開催したいと考えています。
 若い人の柔らかい頭で、
 何かビジネスモデルを見つけてほしいですね。
 我々はそれを応援し、
 支援していきたいと思っています」

つい先日こんなプレスリリースが!
松山アーバンデザインセンターのスクール受講生が 『鍵谷カナ・伊予かすり創始物語』の絵本を制作し、垣生小学校に寄贈します
スクールの受講生は高校生・大学生などの若者が中心。
彼らの中から、
新たな伊予かすりの形が生まれるのではと
期待せずにはいられません!
心になじむこの松山の伝統は、
こうして人から人へと、
紡がれていくのです。


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